NPO法人 日本アレルギー友の会

顧問・医師賛助会員から患者へのメッセージ

2016年3月19日

皆さんは主治医の先生がどのような思いで皆さんを診察していらっしゃるか聞いてみたいと思ったことはありませんか。そこで当会の顧問・医師賛助会員の先生に、日頃の診療で思うことを聞いてみました。

「症状をコントロールしながらスポーツやグルメも海外旅行も楽しんでいただきたいと思います。」という先生からのメッセージは患者として心強いですし、とてもうれしいですね。

アトピー性皮膚炎の日常診療について

横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学教授 相原道子先生

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アト ピー性皮膚炎は、年齢による皮疹の部位や重症度の変化、様々な悪化要因、喘息の合併の有無、血液中のIgEの上昇する場合と正常の場合というように、同じ 病名でも患者さんによってそれぞれ症状や背景が異なります。ですから、治療の基本的な方針、すなわち清潔を保ち乾燥から皮膚を守るスキンケアとステロイド 軟膏やタクロリムス軟膏で十分に炎症を抑えるという方針は変わらなくても、生活指導や重症化したときの対処は個々の患者さんによって異なります。例えば発 汗機能が不十分で乾燥肌だったある成人の患者さんは、ジョギングで適度に発汗するようになって皮膚の生理機能の回復とストレス解消につながり軽快しました が、一方明らかに発汗でかゆみが強くなる患者さんもいます。プールも塩素の殺菌効果でかき傷が多かった皮疹が良くなったと思われる患者さんもいれば、塩素 による刺激でさらに乾燥が進行することもあります。このように同じ行為が悪化要因にも改善要因にもなる場合があることを認識しながら、無理のないチャレン ジをおすすめしています。アトピー性皮膚炎の患者さんの多くは若い人なので、皮膚炎の悪化を恐れて生活全体が消極的にならないよういろいろな面でご家族に も患者さんにもアドバイスしています。

 同様に、患者さんの会には、それぞれの患者さんが過去の悪化の経験にとらわれずに積極的な人生を 送っていただけるよう、互いにサポートしていただきたいと思っています。それにはアトピー性皮膚炎の悪化要因は年齢と伴に変化することや十分な対処をすれ ば悪化しなくなる可能性を認識することが重要です。例を挙げますと、2歳の時に鶏卵で全身のアトピー性皮膚炎が悪化したといって中学生やときに大学生に なっても鶏卵が怖くて食べられないといった患者さんとご家族にお会いすることがあります。たとえ血液検査で卵白に対するIgE抗体がかなり高くても負荷試 験を施行すると多くの患者さんは摂取が可能ですから、積極的に負荷試験をお勧めしています。また、航空機内の低湿度で顔の皮膚炎が悪化してしまった患者さ んには、旅行前のスキンケアとバッグにいつも保湿クリームを入れて頻回に使用することをお勧めしています。あるレスリング部の中学生は十分な外用療法と部 室の掃除を行い全国大会で活躍しました。患者さんにはアトピー性皮膚炎をコントロールしながらスポーツもグルメも海外旅行も楽しんでいただきたいと思いま す。

 

喘息診療で思うこと

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順天堂大学医学部内科学教室・呼吸器内科学講座 准教授 原田紀宏 先生

喘息診療をしていると、喘息の症状がよくなると吸入薬を疎かにしてしまう患者さんに出会うことが多々あります。喘息という病気では、吸入ステロイド薬による メンテナンスが重要であることをご理解いただけたらと思います。吸入ステロイド薬の進歩や、喘息をより理解できるようになったことなどから、現在では喘息 を良好に保つことが可能となってきました。しかし、5%から10%ほどの喘息の方は難治性で、吸入ステロイド薬の進歩のみでは、良好な管理状態を得ること は困難であり、さまざまな併用薬をご使用であろうかと思います。では、残りの90%の喘息患者さんは、みなさんが良好な状態を維持できているでしょうか。 日本アレルギー学会の喘息予防・管理ガイドラインでは、コントロール良好な状態を、症状がなく、発作時治療薬の使用がなく、運動を含む活動制限がなく、呼 吸機能が正常範囲内、喘息の増悪がない状態としています。これまで、日本で行われてきた実態調査では、吸入ステロイド薬を使用されている患者さんでも、喘 息の症状があり、運動などの活動制限がありました。つまり、多くの喘息患者さんは良好な状態を維持できていない可能性があります。喘息の治療目標は、コン トロール良好な状態を保つことであり、喘息の症状がなく、健常人と変わらない日常生活を送ることにあります。この目標を達成するためには、今一度、喘息の 病態を鑑みる必要があるでしょう。喘息の本態は気道に漫然と続く炎症にあります。また、喘息は可逆性といって、よくなったり、悪くなったりを繰り返す病気 ですが、喘息の慢性気道炎症は、気道の壁が固くなる気道のリモデリングという病態を引き起こし、悪い状態を固定化してしまう危険性があります。このため、 目先の症状を抑えることだけでなく、気道リモデリングの予防が重要です。近年の喘息治療は、継続的な炎症を抑える抗炎症治療を行い、コントロール良好な状 態を保ち、かつ、将来のリスクである気道リモデリングと喘息の増悪を抑制することに重きを置いています。こういった喘息の病態と治療目標を患者さんにご理 解頂き、患者さんと医療者との間で共有することが重要です。症状がない状態でも炎症が存在するため、症状がない時においても、吸入ステロイド薬を中心とし た抗炎症治療が必要であることの重要性をご理解いただき、「喘息のない生活」を目指して頂けましたら幸いです。

【あおぞら532号より】